横須哲斗のごった日記

仮面ライダーを中心にまったり語るブログ。アニメ・漫画・小説・ゲーム・映画など諸々。

映画『テルマエ・ロマエ』感想 ~全裸でうろつく阿部寛~

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※画像はイメージです。

割と最近の邦画で、かなり売れた作品ですが、ノータッチ。原作も読んでないです。確か映画化される前にアニメ版があったはずですが、あんまり話題になりませんでしたねー。

主演は阿部寛上戸彩がヒロイン役。

実写版だけ見た知人が大絶賛を飛ばしてきたので、ネームバリューのある俳優が演じれば一定のヒットを飛ばす日本のドラマ・映画界の釈然としない部分を見た気がする。

 

 

 

知ってる人も結構いそうですが、ざっとあらすじ。

 

西暦130年代の古代ローマ。テルマエ(公衆浴場)設計技師のルシウスは、仕事も妻との関係もうまくいかず、ぱっとしない毎日。

友人に誘われてテルマエに浸かりに行ったある日、湯船の中に身を沈めたとたん激流のようなものに襲われ、気づいた時には現代日本の銭湯にタイムスリップしていた!

日本人=「平たい顔族」の技術や工夫に衝撃を受けるルシウス。短時間でローマに帰還してしまった彼は、目撃した風呂文化をローマのテルマエに取り入れ、人々の絶賛を受ける。

何度となく日本の風呂と古代ローマを往復し、名声を得ていくルシウス。ついに皇帝ハドリアヌスにも認められるほどとなったが、皇帝からの様々な難題や試練が、ルシウスに降りかかる。

一方、現代日本。マンガ家志望の女性・真実は、行きつけの銭湯や仕事先のショールームなどでたびたびルシウスに遭遇、その存在に興味を持っていた。

ルシウスが現代に落としていった持ち物から、彼がローマ人であることを知った真実は、古代ローマ史の勉強を開始。そしてラテン語をマスターした彼女の前に、またしてもルシウスが現れた……。

 

とにかく、発想の勝利だな、と思う映画。

「過去時代の主人公が現代の技術を盗んで帰ってくる」という設定が、ある意味、本作のすべてです。

最近マンガなんかでよく見かける、「現代から過去に移動して、現代の技術で大活躍」というネタの派生なのですが、キャラを過去から現代へと移動させることによって、テクノロジーの違いに驚く主人公のリアクション芸、という笑いを作り出している。

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なお、阿部寛のリアクションが面白いかどうか、は好みの分かれるところかと。

ローマ人と言い張っても文句の出ないキャスティングであるのは確かなのですが、阿部寛の演技で笑えるか? というのはかなり個人の感性に左右されそう。

一方、現代日本で目撃したアイテムを古代ローマの技術力でどうにか実現させるシーンは、笑いどころであると同時にルシウスの能力を表現するのに一役買っています。

画面にはまったく映らない部分ですが、シャワーだのウォシュレットだのを人力で実用レベルに至らせるには結構な苦労があるはず。

ぱっと見では日本の文化を失敬して帰ってきているだけのルシウスですが、実はなかなかの技量を持っていることが示されている。

 

そんな本作、前半は連作短編的にルシウスが過去と現代を移動するだけですが、一本の映画としてストーリーを作るために、現代人のヒロイン・真理を投入。

前半ほとんど空気だったこいつが後半で大きな役割を負うのは、功を奏している部分でもありますが、前半のいわば「ルシウス無双」が気に入った、という向きには賛否両論をかもしそうな感じ。

古代ローマに逆タイムスリップしてきたことで、政治闘争に巻き込まれて挫けるルシウスを立ち直らせると同時に、その政治闘争が引き起こすであろう歴史改変について警告する……と、八面六臂の大活躍。

最終的にルシウスとロマンス的な関係に発展してたら印象悪かったですが、こういう関係の決着は文句なし。真理に恋愛感情が芽生えたとしても、ルシウスが朴念仁なので関係の進展は亀の歩みより鈍そう。

 

ジャンルとしてはコメディの本作ですが、あえて小難しいテーマ性を見出すとしたら、「働くことと夢を追うこと」みたいな感じですかね。

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ラテン語を勉強して、ルシウスとさしたる問題もなく意思疎通できるようになった真理ですが、いわゆる労働観には大きな断絶があった。命が懸かっていても信念を貫くルシウスと、マンガ家を諦めて民宿を継ごうとした真理。

いったんは夢を捨てた真理が、テルマエづくりという仕事に命すら賭すルシウスを見て、夢を追う意志を取り戻す……という展開は、割と納得のいくものでした。

ただ真理は「実家の民宿でせいいっぱい働こう」という方向には行かず、「マンガ家をもう一度目指そう」となるんですよね。このへん、なんとなくもやっとする部分ではあるのですが。労働体系とか、それに対する考え方とかの違いが暗示されていて面白くもあり。

現代日本の風呂をパクったルシウスの所業を丸パクリした真理のマンガが『テルマエ・ロマエ』なのでした……というオチは、因果応報というかなんというか。