横須哲斗のごった日記

仮面ライダーを中心にまったり語るブログ。アニメ・漫画・小説・ゲーム・映画など諸々。

平成仮面ライダーを探る。脚本家編 ~歴史とランキングで見る平成ライダー脚本~

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現在上映中の映画『スーパーヒーロー大戦GP 仮面ライダー3号』で脚本を務めたのが米村正二氏ということで、またしても「荒れるぜ! 止めてみな!」状態になっている今日この頃。

もう春映画も5本目で毎年のことなのに何を今更、といった感じですが。

昔はね……仮面ライダーの映画と言えば井上敏樹が良作を書いてくれると、そんな風に思い込んでいた時期もあったんだ……。

(『アギト』~『響鬼』のみならず、『THE FIRST』『THE NEXT』も井上敏樹だったりする)

というわけで今日は平成ライダーの脚本家の話。

 

平成ライダーの脚本を考える時に避けて通れないのが、井上敏樹氏と小林靖子女史の二大巨頭。

この二人に関してはすでにいろんなところで功罪含めて語られていますし、ここ数年はどちらも平成ライダーから離れていますので、今回はざっくり割愛します。

問題はその後。

さすがに2人で延々と回し続けるのは無理だという判断に至ったのか、今井詔二氏が『剣』に起用されますが、中盤であえなくダウン。

その後も會川昇きだつよし米村正二が相次いで平成ライダーデビューし、「誰に脚本をやらせればいいのか?」という迷走、暗中模索が続くことになります。

ここで話題の米村正二

米村氏は『仮面ライダーカブト』でメインに起用され、全体の7割近くの脚本を担当。ピンチヒッターの井上敏樹がある程度参加していますが、メインライターとしては十分な成績です。
『剣』『響鬼』とメインライターの途中降板が2本続いた後に、紆余曲折ありつつも最後まで『カブト』を走りきりました。
これぞ3度目の正直。

重用したくなる気持ちも少しはわかるような気がします。……しませんか?

結果、米村氏は『カブト』~『ディケイド』までずっとサブライターとして参加。小林靖子井上敏樹をアシストしてのけ、『W』以降は春映画へと羽ばたくことになります。

 

で、それと並行して新たに抜擢されたのが

三条陸氏。

マジレンジャー』で呪文を考えていた(ノンクレジットで)という三条氏ですが、脚本家としての腕前は『W』の大成功を見ればおわかりの通りで、今や東映特撮に引っ張りだこ。

ただ、いつまでも三条氏ひとりでどうにかなるわけではないので、『オーズ』で小林靖子に再登板してもらいつつ、長谷川圭一・中島かずき・香村純子・虚淵玄など新しい風を吹かそうとしているわけですね。

つまりここ数年は、『剣』~『カブト』の頃と同様で、

「いったい誰に脚本書かせればいいのよ!?」という試行錯誤をやっている段階

なのではないかと思われます。

結局、最新作の『ドライブ』でもまた三条氏に頼ってしまったわけで、そろそろ第2の米村正二が現れてくれないと困るんじゃないか……? というところに来ているわけですね。

ではここで、平成ライダー脚本数ランキングをご覧いただきましょう。
クウガ』~『鎧武』の15作品、誰がどれくらい脚本を担当したのか、これを見れば丸わかり!

 

第1位 井上敏樹 213本

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第2位 小林靖子 124本

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第3位 米村正二 55本

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第4位 三条陸 43本

第5位 荒川稔久 40本

第6位 會川昇 32本

第7位 きだつよし 30本

第7位 虚淵玄 30本

第9位 長谷川圭一 28本

第10位 中島かずき 24本

第11位 香村純子 20本

第12位 今井詔二 19本

第13位 大石真司 14本 

 

ここに名を連ねるのは、平成ライダーで(一時的にでも)メインライターを経験した、もしくはそれに近い本数を執筆した脚本家の面々です。

毛利亘宏氏など、メインを張った経験がなく、脚本数のごく少ない方は申し訳ありませんが省略させていただきました。

以下、内訳と解説です。こちらはメインになった順に。

荒川稔久 40本

クウガ38本、W2本)

クウガ』で完成度の高い脚本を世に送り出した、平成ライダーの生みの親の一人とも言える存在。

平成ライダーシリーズへの参加は少ないですが、実は『仮面ライダーBLACK』にも1本だけ参加していたり。

また荒川氏の活躍の場はどちらかというと戦隊シリーズで、91年の『ジェットマン』から毎年のように参加、『アバレン』『デカレン』『ゴーカイ』おまけに『アキバレンジャー』でメインライターを務める仕事ぶりです。

 

井上敏樹 213本

クウガ9本、アギト50本、龍騎14本、ファイズ50本、剣7本、響鬼17本、カブト16本、キバ46本、ディケイド4本)

最初期から平成ライダーを支え続けた桁違いのバケモノ。

信者もアンチもうようよ存在する「東映の用心棒」ですが、実際のところ彼がいなければ平成ライダーが今ほどの人気を得るコンテンツになっていたかどうかは怪しい。

最近は漫画原作、ゲームシナリオ、小説執筆とのびのび活動中。

 

小林靖子 124本

(アギト1本、龍騎36本、電王45本、ディケイド4本、オーズ38本)

実質的な参加は龍騎・電王・オーズの3作品なのですが、メインライターとしてがっつり話を作り込むためか、単純な本数では井上敏樹に次いで第2位。

米村正二氏が『電王』に参加した際にも、「ダイアログ監修」という形でクレジットされており、キャラの台詞をいくつか手直ししているとかで、こだわりの深さが窺えます。

 

●今井詔二 19本

(剣19本)

井上敏樹に頼りまくりだった初期4作品の後を受けて参加。

なんと1970年代から活躍している超絶ベテランさんなのですが、いまひとつ平成ライダーシリーズとは相性が悪かったのか、『剣』前半でリタイア。

セーラー服と機関銃」とか、代表作が古すぎる。

 

會川昇 32本

(剣19本、ディケイド11本、ウィザード2本)

上述の今井氏が降板となってしまったために参加。どちらかというとアニメ畑の人で、『機動戦艦ナデシコ』や『鋼の錬金術師(2003)』などが特に有名です。

『剣』では後半のメインライターに呼ばれて好評を博し、以降は『アバレン』『ボウケン』など戦隊シリーズにしばしば参加。

今夏発売予定の『トッキュウジャー』Vシネマでも脚本を担当するとのことで、東映特撮における登板は戦隊に移った感じかな。

 

きだつよし 30本/42本

響鬼5本/15本、ウィザード25本/27本)

クウガ』にも関わったきだ氏ですが、『響鬼』においては大石真司氏との共著が多く、単独でのクレジットは意外にも一桁。『ウィザード』でも香村純子さんとのダブルメイン体制だったため、2作品でメインライターを務めた反面、本数は意外と少なめになった模様。

小説版『響鬼』『ウィザード』ではいい仕事をしてくれていたので、もう一回くらいこの人のメインを見てみたい気もする。

 

大石真司 14本/24本 

響鬼14本/24本)

メインライターではありませんが、きだ氏と連名で『響鬼』前半を支えた影の立役者。『クウガ』にも文芸担当として、縁の下の力持ち的に参加しています。

 

米村正二 55本

響鬼2本、カブト33本、電王4本、キバ2本、ディケイド10本、オーズ4本)

ここ最近めっきり叩かれるようになった方ですが、実は東映特撮にデビューしてからもうすぐ10周年。

参加作品の本数は井上敏樹に次ぐ多さ。『ディケイド』では會川氏の降板に伴って後半のメインライターとなり、「昭和ライダーの世界」編を手がけました。

現在はテレビシリーズから春映画へとその魔手を伸ばし……もとい、活躍の場を広げています。

 

三条陸 43本

(W25本、フォーゼ18本)

放映中の『ドライブ』でもメインを務める、東映特撮の新たな希望の星。

ダイの大冒険』とか『冒険王ビィト』で名前を知っていた人も多いと思われますが、この人が平成ライダーに来るというのも個人的には当時けっこうな衝撃でした。

『フォーゼ』では企画段階から関わって中島かずき氏とほぼダブルメイン、『キョウリュウジャー』でも全話担当、と八面六臂の大活躍。使い倒されているとも言う。

2010年代の井上敏樹はこの人で決まりっ!

 

●長谷川圭一 28本

(W20本、フォーゼ8本)

ウルトラマンティガ』でデビューし、現在でもウルトラシリーズでの活躍が多い長谷川氏。かくいう私も『ティガ』や『ダイナ』をリアルタイムで見ていただけに、「ウルトラで暗そうな話を書く人と言えば長谷川氏」というイメージを持っていた時期があります。ごめんなさい。

『W』では霧彦さんや井坂先生が死ぬ回など、かなりの重要エピソードを担当。かと思うと『フォーゼ』ではゴルフ回を担当したりしています。

現在放映中の『ドライブ』にも参加。

 

中島かずき 24本

(W2本、フォーゼ22本)

グレンラガン』『キルラキル』など、オタクから見るとアニメ畑という印象の強い人ですが、実はウルトラ・戦隊・ライダーの日本三大特撮ヒーローすべてに参加経験アリ。

『フォーゼ』の企画が進んでいた頃だったか、「ある有名アニメを担当した脚本家が次のライダーをやるらしい」という話が出て、『まどか』ヒット直後ということもあって虚淵玄来るか!? というデマがネット上で飛び交っていた記憶。この時は「よかった、中島かずきだった」と思ったのですが、

まさか本当に虚淵玄来るとは誰も思わなかったよね。

 

●香村純子 20本/22本

(ウィザード20本/22本)

きだ氏とのダブルメインも記憶に新しい、香村純子。

戦隊で活躍して平成ライダーへ来るというのはまあ予想できていた流れなのですが、今年になってまさかの『プリキュア』参戦も果たしました。

東映特撮への登板回数はまだまだ少ない人なので、今後に注目です。

 

虚淵玄 30/44本

(鎧武30本/44本)

発表時に色々と物議をかもした虚淵

いわゆる「シリーズ構成」を担当しているので、ほとんど毎回クレジットされており、コラボ回を除いた44本に参加という結果に。単独名義でクレジットされていたのが30本とまずまず。

サブライターになってちょっぴり話を書く、ということの少ない人なので、また東映特撮に呼ばれるかどうかはちょっと怪しいところ。

最近はすっかり客寄せパンダと化してきた気もする。

 

 

こうして振り返ってみると、何か見えてくるものがあるような無いような……?

 

※放映中の『ドライブ』を除く、『クウガ』~『鎧武』の15作品について、TV本編のみに絞って調査しました。
出典は各作品の東映公式ホームページおよび公式読本、Wikipediaに掲載の放映リストです。
また、基本的に脚本家が単独でクレジットされているエピソードのみをカウントしています。『響鬼』『鎧武』などにおける、複数の脚本家による連名のエピソードについては、単独での担当本数と併せて記載しています。

まさか『ディケイド&10周年記念読本』に一期10作品の放映リストが全部載ってるとは思わなかったぜ……!