横須哲斗のごった日記

仮面ライダーを中心にまったり語るブログ。アニメ・漫画・小説・ゲーム・映画など諸々。

『侍戦隊シンケンジャー 第一幕・二幕 特別版』感想 ~「Say Bye」とは言わないさ~

レンタルショップに行った際、次に借りようと思ってた作品が全滅だったので、ものは試しと衝動借りした1本。戦隊ものもライダーほどではないものの好きなので、たまに観ています。『トッキュウジャー』も観てるしね。

この『シンケンジャー』も、講談社キャラクター文庫から『小説仮面ライダー』シリーズが続々出る中、同レーベルから小説が発売された初の(そして現在唯一の)戦隊作品として、注目はしていました。5年前の『ディケイド』コラボで登場したのを観たきり本編はまったくノータッチだったので、今回はまるっきり初見です(それなのに主人公のレッドが実は○○○だったとかいうネタバレはしっかり知ってる)。

 

戦隊シリーズを製作している東映といえば昔っから時代劇で有名なところという印象が強いので、シンケンジャーもその流れを汲んでるんだろうなーとは思ってたんですよ。でもやっぱり何度見てもあの黒子は卑怯。絶対笑います。メンバーがその場で(?)和装に着替えて敵の前に立ちはだかるとかもそうですが、「これぞ時代劇、いかにも時代劇」という要素をあそこまであからさまに盛り込むことによって独特の魅力が形成されている。アクションシーンの立ち回りもモロに『暴れん坊将軍』とか時代劇のチャンバラですよね(なお、当の暴れん坊将軍仮面ライダーと共演しています)。

なんとなく敵の刀を武器で受ける描写とか、1話でひたすらグリーンが避けまくるシーンとかが気になったんですが、ウィキペディアによると「斬られたら終わり」という表現らしいですね。そりゃまあ刀で斬られたら一撃で倒れるよね、時代劇では。実際に刀で斬り結んだ時、一太刀ですぐに決着が決まるかどうかは知ったこっちゃないですが、少なくとも時代劇(の三下たち)は一度斬られたらそれでおしまい、という暗黙の了解がある。斬られた奴がゾンビみたいにうろうろしててもアクションの見映えとかテンポが悪くなるでしょう。

 

十数年前はゴールデンタイムに時代劇(勧善懲悪もの)を放映してた気がするんですが、今はたまに『水戸黄門』をスペシャルでやるくらいで、時代劇をゴールデンでやる時代でもなくなってきている。そんな中で、『シンケンジャー』は実に「時代劇」してるというか、現代を舞台にして甦った時代劇(自分でも何言ってんだかよくわからなくなってきた)と言ってもいいかな、と。

でも時代劇が流行らなくなったのと同様に、現代社会において殿と侍なんていう主従関係は成立しようがない。作中でもレッド・グリーン・ピンクはみんなそういう制度に懐疑的だし、それはそれでいいと思う。そんなものは時代錯誤だ、古くさいんだ、というひとつの意見としてアリです。でも「時代錯誤で古くさいもの」を捨ててしまうのは良いことなのか?という疑問も当然ある。歌舞伎をやっているブルーと、笛をやっているイエローがシンケンジャーという制度に対して賛成の意を示しているのは、そういう芸能にふれているからなのかな、と思ってみたり。

 

逆に保育士(たぶん)をやっているピンクとか、ゲーマーのグリーンとか、割と現代的なキャラ付けをされている2人が、シンケンジャーに対して文句ありげな態度を見せるのもまた、納得。で、レッドは今までずっと1人で戦ってきたし制度としてのシンケンジャーに対しても不満は持っているのですが、やる以上は成し遂げなければ、と子供を助けつつ責任感が強そうなところを見せる。

当然と言えば当然ですが、「人を助ける」「外道衆を倒す」という結果を出さなければ、いくら修行しようが努力しようが無駄である。努力それ自体も非常に重要ではありますし、努力の中で培えるものというのはたくさんあるのですが、何のために努力するのかというと結果を出すためなわけで。だからレッドは1人でも怪人に立ち向かっていく。努力するために努力しているわけではなくて、怪人を倒して平和を守るという結果のために努力してきたのだから。

いろんなところで言われていることですが、ほんとに小林靖子はキャラクターからお話を作っていく人だなあ。主人公に何か一本「芯」を通して、他のキャラクターとの組み合わせで物語を作っていく、そういう作業が上手い人だと思います。これからの物語も観ていきたくなる、いい一話・二話でした。

 

『特別版』を見る限り、瑕疵があるとすればピンクの女優のキャスティングですかね。戦隊ものとか平成ライダーはだいたい経験の浅い若手が主役に揃うので、作品にもよりますが序盤の演技はボロボロになる可能性が高い(『仮面ライダーフォーゼ』とか割とひどかった)。『シンケンジャー』の設定が上手いなと思ったのはここの部分で、レッドは無愛想・ブルーは時代錯誤・イエローは田舎育ちの天然・グリーンはガキという風にキャラ設定がある程度ついてるので、ちょっとくらい演技がオーバーだったり滑舌悪かったりしても問題ないんですよ。

このキャラ設定で考えるとピンクは他メンバーより年上っぽくて、子供好きでまとめ役できりっとしてる人、という感じ。それ相応の演技経験がある人を持ってきたいところなのですが。ピンクの女優が外見・演技ともあんまりそれに沿ったものになってないから、他メンバーに比べてミスキャストな感じが強い。

アニメと違って声優の演技や作画で誤魔化せないんだから、やっぱり実写ドラマのキャスティングって重要だと思います。すべての登場人物にハマリ役の役者が選ばれる、というのもなかなかないことですけど。