映画『ローマの休日』感想 ~その恋は実ることなく~
先日WOWOWで無料放送していたので、何の気なしに録画して観てみました。
実はまったくの未見。オードリー・ヘップバーンという女優が主演だということと、身分違いの恋の話だということくらいしか知らなかった。
オタク界においては『機動戦士ガンダムUC』のヒロイン・ミネバの偽名の元ネタであるというのが大きいかな。個人的には脚本家の井上敏樹が『超光戦士シャンゼリオン』のインタビューでちらっと名前を挙げていたのが印象に残っています。井上氏いわく『或る夜の出来事』の方が面白くて好きだそうですが(笑)。
さて、どんな話かといいますと。
ヨーロッパ各国を訪問中の某国王女・アンは過密スケジュールに音を上げてヒステリーを起こしてしまう。医者に鎮静剤を打たれて就寝……ところが、夜のローマ市街の喧騒がどうしても気になったアンはいきなりアグレッシブに脱走を決行。
しかし街に出てきたところで鎮静剤が効いてきてしまい、道端で眠りこけてしまいます。通りがかった新聞記者のジョーは、紆余曲折の末に彼女を自宅アパートで介抱する羽目に。
翌日、彼女の正体に気づいたジョーはこれを特ダネとしてものにすることを決意し、友人のカメラマン・アーヴィングの協力を得てアンと街へ繰り出すのですが、そのうちだんだん彼女のことを好きになっていく。アンの方もジョーに惹かれ始めていて……という物語。
オチも何も知らなかったので、最後まで割と楽しんで観ることができましたね。特筆すべきはオードリー・ヘップバーンの演技。吹替え版で観たので台詞の言い方については残念ながら確認できなかったのですが、冒頭とラストでまったく異なる表情を浮かべていて、ごく普通の少女としての1日を過ごしたことで精神的に成長を遂げたのだな、ということがストレートに伝わってきました。
アンの心境の変化としては、普通の少女としての生活をわずかばかりながら体験したことで、かえって王女としての責任を自覚した、というところかなと感じたのですが、どこにターニングポイントがあったのかしら……?
と思ったらなんというか解説的なものを見つけた。
『「ローマの休日」でアン王女のベッドシーンが想定されている箇所について』(勝手に引用させていただきましたが、いいんだっけこれ)
http://finalvent.cocolog-nifty.com/fareastblog/2010/02/post-e3fe.html
そっか、直接画面に出てないだけで18歳未満お断りのあれこれがあったということが示唆されていたのか。この辺りのニュアンスはやっぱり吹替え版では伝わりにくいのかなあ。
と、そういう予備知識を得たうえで改めてこの語らいのシーンを見返すと、ヘップバーン演じるアンが衣装を整えてから出てくるところの笑みが、昼間に見せていたそれとはまったく異なる色っぽさを漂わせていることに気がつきました。
これ絶対に「ゆうべはおたのしみでしたね」状態だ。(シーンが違う)
そして、決定的な一線を越えてしまったからこそ、戻らなければいけないと決意を固めるわけなんだな。「いつまでも続いてほしいこの一瞬は、いつまでも続くわけではない」とわかってしまったから、気持ちを通じ合わせておきながら、離れる決心をする。
いい脚本だし、ヘップバーンがそれを活かすいい演技をしているということは、吹替え版でも伝わってきました。さすがに不朽の名作と呼ばれているだけのことはあるな、と感心(すごく上から目線)。
今度字幕版も借りてきて観てみようと思います。
ここからはまったくの余談ですが、予備知識を持った状態での再見でふと思い出したのが『WHITE ALBUM2』の序章(学生編)でした。
あれも主人公とヒロインが想いを通じ合わせるのが1回こっきりで、そのあと決別しに行くというか立場が違ってしまった状態でまた会いに行くんですよねえ。うーん切ないラスト。