横須哲斗のごった日記

仮面ライダーを中心にまったり語るブログ。アニメ・漫画・小説・ゲーム・映画など諸々。

『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』総括感想(長い)

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最終回でテンション上がりすぎて3年以上放置してたブログを叩き起こしました。
ネタバレ全開ですので『ルパパト』未見で当記事をご覧の方がいましたら一応ご注意ください。  

 

 

 


●シナリオ雑感
いやー最後の最後にやられた。
「魁利が快盗を続けるオチになるのではないか」と予想してて、その点についてはまあ当たったんですけど、50話で持ち込まれた「快盗をドグラニオの金庫からどう出すか」の解決法はまったく予想がつかず……。テレビの前で「巧い!」と素直に驚嘆しました。
映画を見に行ったのにジャックの能力すっかり忘れてたし、本編でも結局出なかったから、まさか最後に拾ってくれるとは思ってもみなかった。2代目の3人はギャングラーからのコレクション回収ではなく、あくまでもジャックポットを探すために結成されたメンバー、ということのようで。

 

全体を振り返って気づいたこと。
思い返してみれば『ルパパト』ってキャラクターの強度が当初からかなりのもので、登場人物の成長要素はあまり強くなく、あくまで快盗3人の凍っていた時間が溶けたところで物語が終わったんですよね。
成長要素は魁利に割り振られており、失った兄・勝利を取り戻すためにと、一人でザミーゴを探しに向かうなど、第1クールからその危うさが描かれていました。
警察との仲が深まるにつれて、圭一郎と兄を重ねて見るようになり、その複雑な内心に我々はやきもきさせられたものです。そして正体バレを経て、それでもなお自分に寄り添おうとする圭一郎を前にして、「俺が圭ちゃんになれないみたいに、圭ちゃんは俺みたいにはなれない」ということに気づく。
快盗と警察は、ひとつになることはない。しかし、それを気づかせてくれたことで、魁利はまっすぐに圭一郎と向き合えるようになり、そしてまた、かつてそっぽを向いて突き放した兄とも、向き合えってその感情をさらけ出せるようになった。

逆に、キャラクターとしてシナリオの割を食ったとも言えるのがノエルと言えます。
「コレクションを回収してアルセーヌを蘇らせるという個人の願いを叶える」「ギャングラーを倒し、世界の平和を取り戻す」という2つの目的の両取りを目指しながらも、コレクションの完全回収もギャングラー殲滅も『ルパパト』本編では完遂が描かれずに終わる。最終的にノエルの行動には、良い意味でも悪い意味でも「報い」が与えられないままでしたが、もう少しノエルの目指す選択に対する両戦隊からのリアクションが描かれてもよかったかな、と。

そしてまた、本作最終回で描かれたのは、「警察戦隊の部分的敗北」でもあります。
世界の平和を守るためにはドグラニオを倒すしかない。だが、そのためには快盗を犠牲にしなければならない。究極の選択を突き付けられた時、圭一郎たちにできたのはドグラニオを拘束することだけだった。
ドグラニオを無力化し、ギャングラー残党も着実に減らし、世界の平和に向けて進んではいる。しかし快盗を助け出す手段を警察戦隊は持たず、「快盗をどう救うか」という問題は、先送りにするしかなかった。
警察戦隊は万能のヒーローではない。これまでギャングラーに襲われた人々、ザミーゴに凍らされた人々、金庫の中にいる魁利たち、すべての人を奇跡のように助けることはできない。

では、そんな人々を救うのは誰か?
「警察官に頼らない奴が、快盗になるんだよ」
警察戦隊の力だけでは救いきれない人々を、快盗が助ける。
各々の大事な人を救うために活動した魁利たちは(もちろんその過程でギャングラー被害拡大に関わるなど、罪も犯しているわけですが)、結果的には他の多くの失踪被害者をも、救出することになりました。
そして勝利・彩・詩穂の3人は、自ら快盗となる道を選び、魁利・透真・初美花を救出する。
誰も彼もを警察が救いきることは簡単ではない。けれどもそんな時に、ひとりひとりの人間が、それぞれの意志で大事なものに手を伸ばす――魁利たちだけではなく、人の心の中には、きっと快盗の存在がある。
もちろん個人の望みだけを叶えればいいわけではなく、世界の平和、より良き未来を目指す警察戦隊のような心も忘れられず在ってほしい――後日談にて、子供たちが笑顔でパトレンジャーのソフビを掲げるシーンに、そのような意識を感じ取ります。
ここで注目すべきがギャングラーで、組織のトップであるドグラニオの下にゴーシュ(=個人の欲望)とデストラ(=組織の秩序)という対立する2人が存在し、組織を維持している。けれどデストラを喪ってバランスを欠き、ついにはドグラニオ自ら均衡を手放したことで、幹部たちは、ひとり、またひとりと斃れていくことになりました。
また一方でノエルの「個人の望み」と「世界の平和」は、その両方が叶う姿こそ描かれなかったものの、あくまでもノエルはそれを「目指し続ける」存在として描かれる。
「個人の望み」と「世界の平和」。その2つは「VS」の関係にあるけれど、きっと両立を目指していける(完全に叶うところまでは描かず、あくまで「目指せる」と置く)。それが『ルパパト』の物語が導き出した答えなのではないでしょうか。

 

 

●各キャラ雑感など
◇夜野魁利(ルパンレッド)
どいつもこいつも俺のこと好きすぎかよ……!
幻影とはいえ兄を自ら撃ち抜く、強制帰宅ビーム無効化体質、など主人公ながら抱え込んだ負の感情が非常に危うかったのですが、最後には兄貴とも素直に向き合い、堕ちずに無事ゴールしました。
「こんな快盗じゃなくてもっとたくさんの人助けなよ」とかラスト3話の言動見るに、「圭一郎なら金庫を開けてくれるはずだ」ではなく「圭一郎ならドグラニオを倒せるはずだ」という信頼も覗き見え、そこには自分たちが生還したいという意思があるようにはあまり見えず、最後までそういうとこだぞ魁利! 意識的にか無意識にか、非常に重たい信頼を乗せるんですよね……。
幼少期の回想では呼び方が「兄ちゃん」でしたが現在の時間軸ではずっと「兄貴」呼びで、最後の最後にまた「兄ちゃん」と呼びかけるのが、快盗になる以前からの憑き物が落ちたようで最終回でもとりわけ好きなポイント。 

◇宵町透真(ルパンブルー)
全方位型いじられ苦労人。
戦隊シリーズにおいて、ブルーがクール・優男系イケメンだった場合往々にして当初の印象を大きく崩すエピソードが入るのですが、ここまで苦労したブルーもちょっとなかなか思い付かないような。
入れ替わり回の言動のせいで、一時期は警察戦隊から「婚約者に逃げられて女遊びに走る男」の烙印が押されていたのが密かに気の毒。
他にもエアロビクス回・キツツキ回とギャグが激しい回で主役を張(らされ)る一方、陸上少年との交流などまともな単独エピソードも用意されているあたり隅に置けないというか。
終盤では、50話のドスのきいた「ルパン、ブルー……!」と51話ラストの優雅な「ルパンブルー……」との落差が見どころ。

◇早見初美花(ルパンイエロー)
くるくると動き回って愛嬌を見せ、気遣いも見せ、両戦隊のメンバーと一番関わる陽性のヒロイン。ただし普段の何気ないシーンで細かく絡みがあるせいか、魁利との個別エピソードがなかったことに後で気づきました。
覚悟の決まりっぷりはメンバー最年少でも快盗の一員となるだけのことはあり、48話にて素顔を明かすシーンでの細かい表情の動きなどは、かなり好み。
「2年前に知り合いたかった」という咲也に、すぐに「今だから咲也さんのいいところ知れたんですよ」と切り返すのがさすが。

◇朝加圭一郎(パトレン1号)
我らの圭ちゃん。
たぶん『ルパパト』視聴者なら大体みんな圭ちゃんを好きになってると思うんですが、個人的には圭一郎のごくたまに垣間見える若さ、未熟さがたまらないポイント。
5・6話で魁利に完敗を喫して頭に血が上ってしまったり、第3~第4クールで魁利を気遣いつつも距離感をつかみそこねていたりと、魁利絡みの失敗が多め? 「俺がもっと頼れる警察官だったら……」(49話)のシーンで、叫ばず静かに自分の不甲斐なさを吐露していた部分がお気に入り。
演技にせよビジュアルにせよ、若さと頑固さと泥臭さと優秀さを絶妙なバランスで体現しており、結木滉星氏は、キャスティングのレベルが高かった『ルパパト』の中でも随一のはまり役だったのではないかなと。

◇陽川咲也(パトレン2号)
持ち前の人懐こさで主に透真・初美花との関係が進展。透真と築いた奇妙な先輩・後輩関係はどこへ向かうのか。
最終的に、初美花からの好感度はかなりいいところまで行ったと思うので、普通にお付き合いできそうではあります。
東映公式のキャストメッセージによれば、演じる横山涼氏は咲也のキャラについて当初「子犬系男子」と聞かされたとのことですが、「やっほー!」って呼びかけられて「やっほー!」って手を振ってしまうところで腑に落ちました。確かに犬だわ。

◇明神つかさ(パトレン3号)
我らのつかさ先輩。
放っておくと濁点混じりで突っ走る圭一郎の抑えとして活躍。殺陣ではやたらと寝技に持っていきたがる印象が強い。
ぬいぐるみ関連を抜きにするとストッパー常識人枠だったせいか、他のメンバーに比べてちょっと扱いが薄かったのは残念といえば残念。個別エピソードもやや少なめという印象があります。終盤でも短い台詞で存在感を出してはいたんですが。
ずっと思ってたんですけど、「パトレン3号!」の名乗り声は最後までちょっと張ってたというか、普段のつかさの声から離れた声に聞こえてましたね。

◇高尾ノエル(ルパンエックス / パトレンエックス)
全方位を攻略しそこねた追加戦士。
シナリオ雑感でもノエルが割を食ったと書きましたが、最終回を終えて全体を振り返ると、「アルセーヌ蘇生のためにコレクション全回収」とか「ギャングラーに故郷を追われた異世界人」とか要素を背負わされすぎて、機能不全を起こしていたかなと……。
終盤までいまひとつ煮えきらないというか、グッティが気分で両戦隊を行き来しなくなったぶんノエルが両陣営をふらふらしていたような。
「実は人間じゃなかった」は、さすがに着ぐるみ怪人体でもないと重みが半減というか、明かしたはいいもののどちらの戦隊からも深く突っ込まれずに終わるという、設定倒れになってしまった感あり。

◇コグレ、グッドストライカ
快盗側のサブキャラ2名。グッティはどっちつかずとは言いつつ、中盤からはコグレとの絡みも増え、ほぼ快盗側の一員と化していたかと。
コグレさんは中盤までずっと「実は諸悪の根源なのでは……」「実は裏切るのでは……」という疑惑をほんのりと匂わせていたのですが、最終的にはルパン家のためなら非情に徹することができるけど悪人ではない、というポジションに落ち着きました。
マグナム回で不穏そうだったものの、直後の分裂回がある種の分水嶺で、あそこから「ひそかに体を張る八面六臂の有能サポーター」みたいな方角へ舵を切った感。
でも、最終回で「君たちの大事な人を助けたければジャックポットストライカーを……」と2代目快盗をスカウトしてるので、やっぱりこの執事はド畜生です。

ヒルトップ管理官、ジム・カーター
警察側のサブキャラ2名。か、書くことがない……!
こっちは終始いまひとつ影が薄く、そこまでフィーチャーされる回もなくキャラが広がらなかったのが少々残念か。
ヒルトップも腹黒でもなんでもなく普通にいい上司で終わりましたね。

◇ドグラニオ・ヤーブン
気だるげな雰囲気で酒を飲んでるというとジニス様(『ジュウオウジャー』)と被るのですが、上半身すらりとした着ぐるみでパワー系だったジニスとは異なり、アクション向きでなさそうな小柄な身体で多彩なコレクションを自在に使いこなし、おまけに仕込み杖も完備のテクニカルタイプで、両戦隊を一蹴する各種能力のCG表現は面白かったです。
老いた身体ゆえに部下にボスの座を譲ろうと考えたドグラニオが、老いた身体ゆえに敗北するというのはなんというか皮肉。
倒されることなく国際警察の地下に拘禁されるという結末については、「ラスボスを封印or眠りにつかせる」という戦隊はいくつかあれど、四方八方から銃火器を向けられた状態で拘束されるという絵面がなかなかインパクトありました。
で、書きながら思い出したのですが、『未来戦隊タイムレンジャー』では戦隊のリーダー格であるユウリが警察官で、ロンダース怪人は基本的にきっちり逮捕していたのに、親玉であるドン・ドルネロのみ命を絶たれて終わりで、ギャングラーと正反対だなあ……とか。

◇ザミーゴ・デルマ
今作の宿敵枠。
ドグラニオ的には後継者レースの本命はザミーゴかデストラだったのでしょうが、「組織に縛られることなく楽しみを追って生きたい」という在り方は、「組織の中で好き勝手したい」ゴーシュとは少し違った奔放さを感じさせました。
ギャングラーの中でも珍しいガンマンスタイルの戦法で、10話・50話などでのルパンレッドとの一騎打ちはいずれも本作の戦闘シーンでも屈指の迫力。ただ序盤の登場(10話)から再び快盗と絡むようになるまで(39話)に間が空き過ぎた感はあり、どこかでもう一回くらい魁利との因縁を組み込んでおいてもよかったかも、とは惜しまれるところ。

◇デストラ・マッジョ
パワー系幹部枠。『ルパパト』幹部の中では唯一巨大化しての敗北。
動物モチーフが多いギャングラー怪人の中で、わかりやすく手榴弾+恐竜?モチーフの異質感、立ちはだかる壁として終盤まで活躍。
ヒラからは慕われつつもゴーシュのわがままとドグラニオ様の要望に胃を痛める中間管理職っぷりも素敵でした。

◇ゴーシュ・ル・メドゥ
ナリア様(『ジュウオウジャー』)2号……! ナリアとは性格正反対ですが、ボスの手にかかるという点では共通しているとも言える。
いわゆる「参謀・悪の科学者枠」と「女性幹部枠」を兼務し、直接の描写はなくとも相当な人数を殺してそうです。
ルパンレンジャーとノエルの身体は刻みたがっていたのに警察にはあんまり興味なさそうだったので、警察で鍛えた筋肉質の身体は好きじゃないんでしょう、たぶん……。

 

●アクション雑感
独特のカメラワークで魅せる、両戦隊のメイン武装であるVSチェンジャーでの近接銃撃戦にこだわった殺陣が売り。これに関しては言葉を尽くすより映像を見た方が早い。
その中でも、回避主体+ビークル武装を多用するルパンレンジャーと、防御主体+初期装備のみのパトレンジャーという差別化もできていたのではないかと。
後半のパワーアップが快盗ばっかりで警察側が使うビークルが増えない、というのは確かに目につくんですが、中身が一般人であるルパンレンジャーと、現職の警察官であるパトレンジャーでは、元々の戦闘能力に差があるはずなので、個人的には許容範囲。
盛り込まれたのはごくわずか(11・12話くらい)でしたが、主観視点でのパルクール風の映像も面白かったです。もっと長尺で見てみたかった。

 

●ロボ・CG雑感
第2話が本当に出色の出来で、あれでぐっと引き込まれました。
ルパンカイザーの超格好いい合体バンクからのCG特盛りの夜間戦闘はほんとに何度も見ました。
さすがに一年通しては無理で、結局いつもの着ぐるみ+バンクかぁ、と思っていた矢先に25話のグッドクルカイザーVSライモン戦で腰を抜かす。最後の巨大戦がドグラニオに敗北(快盗戦隊)と戦闘員を瞬殺(警察戦隊)だったのはやや残念でしたが、ライモン戦・デストラ戦などターニングポイントでは熱い展開を盛り上げるのに一役買ってくれました。
あと、市街での巨大戦の表現のひとつとして、建造物ミニチュアのサイズを上げたというのが杉原監督のこだわりポイントだったようで。31話・48話の合成ギャングラー戦において、等身大のスーツと巨大ロボとを絡めて収めたカットも印象的でした。

デザイン面では久々に正統派の格好いいデザインの1号ロボ(ルパンカイザー/パトカイザー)だと思ったんですが、玩具としてのプレイバリューは手足を自由に組み替えて遊べる昨年のキュウレンオーのほうが格段に上だよなあ、と玩具売り上げなんかの話を聞きつつ思ったところ。


●スタッフ雑感
メイン脚本は、『動物戦隊ジュウオウジャー』以来の香村純子氏が担当。
放映開始前から個人的期待度が勝手に鰻上りだったのですが、「戦隊VS戦隊」という前例のないフォーマットで、最後まで非常に面白いドラマを描いてくれました。いつかライダーでもメイン脚本やってほしいですね。
また、ともに数々の東映特撮やテレビアニメを手掛けてきたベテランである、荒川稔久氏と大和屋暁氏が脇を固める布陣。
荒川稔久は19話までの参加で、(たぶん)好物のWヒロイン回のほか、各キャラを掘り下げる手堅いエピソード。
反対に26話~終盤に参加した大和屋暁は、エアロビ・キツツキ・シャケと頭のおかしい……もとい、爆笑間違いなしのギャグ回が印象的。のみならず、圭一郎VSノエルの決闘回も担当されています。

その他、金子香緒里氏が総集編や閑話休題回などを担当し、終盤にはメインエピソード(43・44話)にも参加。検索かけても担当作品が出てこないので、まだキャリアの長くない方だと推察されます。
今作ではあまり独自の色を出した感はありませんでしたが、映画撮影回は面白かったので、今後他の作品に登板してどんな特色を出してくるかに注目といったところ。
本編における登板回数は以下の通り。
〈香村純子=33話+劇場版、金子香緒里=7話、荒川稔久=7話、大和屋暁=6話〉

 

監督は、こちらも『ジュウオウジャー』から監督としてローテーションに加わることになった杉原輝昭監督が、パイロット監督として序盤から見ごたえのあるアクションを演出。宇都宮P作品ではおなじみの中澤祥次郎監督、ベテラン渡辺勝也監督、戦隊シリーズ主力の一員と言える加藤弘之監督がほぼ同数を担当しました。
夏ごろに杉原監督が劇場版のために抜けたぶん、中盤の約1クールを他3人の監督で回しています。
正月回のみの担当となった葉山監督は、超バトルDVDの演出とのことで、今後の作品では少しずつローテーションに参加してくるかも……といったところでしょうか。
こちらの登板回数は下記。
〈杉原輝昭=16話+劇場版、中澤祥次郎=14話、加藤弘之=10話、渡辺勝也=10話、葉山康一郎=1話〉

 

●マイ・ベストエピソード
3部門から、独断と偏見でそれぞれベスト3エピソードを選出。

○シナリオ編
◇3位・第25話「最高に強くしてやる」
アクション面での見ごたえも十分ですが、直前のギーウィ回を受けて、つかさが「ルパンレッドを援護する(=快盗を死なせない)」にたどり着くところも素敵。少し強引かもですが、たぶんこれが50話での「見殺しにはしたくない」「3人で生きて帰れよ」に繋がってくるんですよね。
また、ノエルがようやく本心を見せ始める回でもありました。
この頃はまだ本心なのか否か微妙な描かれ方をしているのですが、実はここで話していたことはブラフでも何でもなく本心だったという。
ノエル周りの設定を頭に入れた上で見ると、また少し印象が違って楽しめるのではないかなと。

◇2位・第30話「ふたりは旅行中」
中盤の大きなターニングポイント。
透真・初美花とは違い、大切な人を取り戻すだけではなく、その上で魁利には向き合わなければならないものがある、という事実が魁利にも(そして視聴者にも)突きつけられる。
また、なにやら外側の事情をうかがわせる「おそらく警察用のビークルという設定だったであろうスプラッシュを快盗に使わせる」という展開ながらも、魁利の葛藤、Wレッドの直接対決、圭一郎がルパンレッドに見せる信頼、と盛りだくさんの内容。
臭すぎるギャングラーに大苦戦して留守番組のアクションをコミカルにしつつ、無臭にしたガスをまき散らして街を火の海というえぐい作戦も利いています。

◎1位・第49話「快盗として、警察として」
1年の積み重ねが爆発する、魁利×圭一郎最後のメインエピソード。
警察官はあくまで手段にすぎず、困っている人を助けるためなら辞めても構わないと宣言する圭一郎。昇る朝日をバックに、2人ついに素顔で向かい合う。しかし現れたギャングラーが、2人の進む向きをまたしても正反対にする。魁利は圭一郎の背中をそっと押し、それぞれの道を歩き出す……。
前半部分の、1話を思い起こさせるシチュエーションでの会話もさることながら、ラスト数分、2人の関係の結実に向けて、脚本、演出、演技いずれも全力投球の、『ルパパト』最大級の佳境。
咲也がノエルに詰め寄るシーンがあっさり片付けすぎというのは本放送時に少し気になったのですが、それを帳消しにするほど、魁利と圭一郎の感情と信念の応酬が光りました。


○アクション編
◇3位・第2話「国際警察、追跡せよ」
ルパンカイザーのCGアクションに加え、VS戦隊ということで快盗VS警察をめいっぱい描いてアクションの見どころが多数。
ギャングラーを間に挟みつつ繰り広げられる銃撃戦、ビークルのCGをふんだんに動かしてのカーチェイスに引き込まれます。
パトメガボーでひと笑いを取ったり、初のパトレンU号の一撃ストライクで地面に炎が走る演出も良好。

◇2位・第42話「決戦の時」
コレクションを奪われるという絶望感のある前半から、視線の交錯、ルパンレッドの捨て身の信頼に応えるパトレン1号、快盗戦隊+ノエル+パトレンU号の5人での名乗り、最後まで一歩も退かないデストラ、OPを流しながらの巨大戦などとクリスマス商戦に向けたアクション巨編として大満足の回。
巨大化ルパンマグナムを構えてたたずむグッドクルカイザーの見得が美しすぎる。

◎1位・第25話「最高に強くしてやる」
超再生能力を持つライモンに対し、単独では歯が立たない両戦隊がついに呉越同舟
本作特有の派手なカメラワークはもちろん、アクターさんも熱演で、両戦隊が力を尽くしてのライモンの拘束、お宝を回収してライモンに蹴りを入れるWレッド+ルパンエックスなど、格好いいカットが満載。
グッドクルカイザーのぐりぐり動くCGは劇場版を思わせる迫力で、放映日に10回くらい見返しました。

 

○キャラ編
◇3位・第27話「言いなりダンシング」
説明不要の一大イベント。
怪盗だし1回くらいレオタード着せとくかという気持ちが誰かの中にあったのかもしれませんが、『キャッツアイ』って今どの辺の年齢層まで通じるんでしょうかね?
にこやかに踊り狂う咲也、真顔で踊り狂う透真もさることながら、あれほど強力なコレクションをもらっておいて何故かそれをチンケな金稼ぎに活用するギャングラーも笑いを誘います。必死に集めたお金であの太ったオッサンの〝化けの皮〟を買ったのかと思うと……。

◇2位・第4話「許されない関係」
男性的な口調というつかさのキャラクターもあってか、初期に一番演技の硬かった奥山かずささんですが、ぬいぐるみを相手にした独白や顔すりすりでぐっと幅が広がった回。
熱血・生真面目で(主に咲也に対して)小うるさい先輩然としていた圭一郎が、つかさの趣味について思いがけず度量の広いところを発揮し、あくまで快盗主体で物語が進行していた1~3話から一転して、警察戦隊メンバーの魅力を豪速球でぶち込んでくる初期の名エピソード。
この第4話で警察戦隊が好きになった視聴者も多いのでは。
拉致された人々を心配して情報を漏らしてしまう初美花など、快盗側の雰囲気も良いアクセントに。

◎1位・第51話(最終回)「きっと、また逢える」
細かく拾っていくとキリがない。
・望みを叶え憑き物の落ちたような快盗
・いつもより濁点3割増しくらいで吠える圭一郎
・これまで見せなかった老いを最後の最後で漂わせるドグラニオ様
・大切な人との再会、すぐに駆け寄れない魁利
・最後のコレクションを前に、1年ぶりの再会を果たす快盗と警察
ドグラニオの処遇や、叶うところまで描かれなかったノエルの望みなど、決着を投げてしまった部分もありますが、とにかく強度の高いキャラクターの魅力で突破。
OPで争奪していたコレクションや1・2話を思わせるアクションシーンの組み立て、最後のギャングラーのスーツが1話冒頭怪人の改造というにくい配役、両戦隊の素面名乗り(快盗は素面とはちょっと違う気もしますが)などなど、トータルでの満足度が非常に高い最終回。


●まとめ
あまり書いてはいませんが、もちろん不満とか「ここは良くなかったのでは……?」みたいなポイントも色々あります。
ただ、それを考慮に入れてなお余りあるキャラクターの魅力、ストレスを感じさせないシナリオ、迫力のあるアクションなど、高く評価したいポイントがいくつもある作品だったと思います。
玩具売上はお察しだったのがもはや公然の事実ですが、ブルーレイのほうはなかなか売れているそうで、販売形態が異なるので単純比較はできないものの累計歴代2位の『ゴーカイジャー』に迫る勢いとのこと(東映公式サイトより)。
『ルパパト』単独のVシネマはまだまだ気が早い話と思いますがが、本編では諸々の明確な決着がなかっただけに、もっともっとこの物語の続きが観たい!と思わせてくれる作品でした。