『仮面ライダードライブ』第28話感想 ~まさに踏んだり蹴ったり~
前回の感想記事で、「激昂しててもレッツ変身って言うんだ……」とツッコミを入れたのですが、
今回ちゃんと「レッツ」抜きの怒りの変身をやってくれたので私は満足です。
第28話「なぜ家族は狙われたのか」(脚本・長谷川圭一 監督・石田秀範)
剛の抱える悩みは解消するどころか悪化の一途。
先週は実の姉に強烈な一撃をもらい、今週は姉を重ね合わせた人に痛烈な一撃を食らい……。
我を忘れて人間を殺そうとしたところをよりによってチェイサーに止められたり。
ほんとに踏んだり蹴ったりというか泣きっ面に蜂というか。
剛がここまで荒れることになってしまったのは霧子との間にわだかまりが生じていたからで、それは霧子がキツイ一発をぶちかましたからで、それはチェイスが味方になったからで……と辿っていくと、霧子・剛・チェイスの対立関係って
「グローバルフリーズの日にプロトドライブが霧子を助けた」
というところから始まるのですよね。
そして、プロトドライブことチェイスはプロトゼロであり、おそらく蛮野博士が造り出したロイミュードのうちの一体である。
蛮野博士の罪の証であるロイミュードが、人間を救うという正しい目的のために使われた。
にもかかわらず、それが巡り巡って現在、大きな確執を生んでしまっているというのはユニークな点です。
あと、今回のラストで剛のもとに霧子が行かなかったことはちょっと残念というか、さらにこじれることになりそうだな、と。
剛のもとに駆けつけるにはブースタートライドロンが必要で、しかし霧子は空飛ぶトライドロンには恐らく安全性の観点から乗ることができなくて……という理屈は(そして撮影や合成の手間という事情も)想像はできるのですが、
霧子がただ特状課で待っているだけというのはよくなかったよな……。
ドライブと霧子がトライドロンに乗っているカットがこれまでいくつあったかは覚えていませんが(もしかするとなかったかも?)、人間と仮面ライダーが同じマシンに乗れる、ひとつのフレームに収まることができるというのが『ドライブ』の愉快な点だったかなあ、とは思うのです。
それは、高寺重徳氏が初代仮面ライダーから見出し、『クウガ』に取り入れようとした要素でもあります。
『仮面ライダー』の場合は、ライダーの隣にいるのは、変身しない「普通の人」なんですよね。滝じゃない場合は、おやっさんですよね。そういう変身する男と、しないままの男たちの姿が、ひとつのフレームの中に収められてる世界――。自分にとっては、それが他のヒーロー番組にはない、「ライダーらしさ」だと思えたんです。(『語ろう!クウガ・アギト・龍騎』高寺氏のインタビューより)
なので、ブースタートライドロンというアイテムは、見ようによっては『ドライブ』の良さを削ぎ取っているような気がします。
そりゃいつも私道で撮影するのは大変だろうし、CGで飛ばせばそれで済むんだろうけど、そこは織り込み済みで車のライダーに一年挑戦するって最初に決めたんじゃないの? なんで車を空に飛ばしてライダー専用マシンにしちゃうの? と思う今日この頃。
それにしても、『ドライブ』で「犯人は悪女」パターンが見られるとは。
『W』では美女が事件の犯人なのはしょっちゅうあることで、終盤ではそれを逆手に取ったエピソードまであったのですが、『ドライブ』ではかなり珍しいかな。
今回登場した相馬頼子は、犯罪心理学者・西堀光也の娘と説明されました。奇しくも父と同じ罪状でお縄を頂戴することに。
西堀光也とは第0話「カウントダウンtoグローバルフリーズ」の登場人物です。
有名な犯罪心理学者で、自分でもやってみたくなっちゃって未解決事件の模倣を繰り返し、ロイミュード005に擬態されてしまった男。
「必ず復讐してやる」との捨て台詞を残して進ノ介に逮捕されたのですが、どうも娘の教育を盛大に失敗していたようです……。
この第0話の脚本を書いていたのは今回の担当でもある長谷川圭一氏で、自分の出していたネタを拾った形に。
正体がバレてからこっち、「進ノ介が融合進化態となっていた犯人に手錠をかける」シーンが続いていて、こういうところで警察っぽさをアピールできるようになったのはいいところのひとつかな、と思います。
前半の『ドライブ』は刑事というわりには犯罪者をバリバリ逮捕するわけでもなく、事件関係者の後始末がちょっとおざなりだったというのが正直なところなので。
さて次回は剛がロイミュード側についたり進ノ介の父の仇が現れたりと、また大きく話が動く模様。
前半の停滞が嘘のような急展開はまだまだ止まらないよ。
個人的には、進ノ介=仮面ライダーだとバレてからまだたった3話しか経っていないという事実がまずちょっと信じがたい。
最終フォーム登場の時期も近づいてきていますし、進ノ介の父に関する謎をクライマックスとしてそこに新フォームを持ってくるつもりなのでしょうか。
こうも矢継ぎ早に新しい要素を繰り出されると、それだけで面白く感じられる反面、ひとつひとつの要素の扱いがちょっと雑かなと考えもしますし、果たして第4クールでやることが残るのかという疑問も出てきます。
進ノ介の正体がバレるエピソードも、チェイスが仮面ライダーとして再起するエピソードも、剛の隠していた事実が明らかになるエピソードも、もうちょっと尺を取ってじっくりやっているのを見てみたかった、というのが一視聴者としての素直な気持ち。
上述の最終フォームの件にしてもそうですが、「玩具発売スケジュールに全体のストーリーが影響されている」ように見えてしまいかねないのが、『ドライブ』の欠点のひとつかなあ、ということはここ数話で改めて感じています。
最終フォームが出た後もハイペースで物語が展開していけば面白いのですが、最終フォームの強さをアピールするだけの通常構成のエピソードがまた続くようなら、それはやはり「玩具発売に番組が振り回されている」ということになるのでは……。
どうにか失速せずに完結まで向かってもらいたい。