『仮面ライダードライブ』第27話感想 ~追跡、撲滅、いずれも?~
マッハー……なんて言ってる余裕はない!
でも「レッツ!」はしっかり言うところに詩島剛のこだわりを感じる。
第27話「詩島剛が戦う理由はなにか」(脚本・長谷川圭一 監督・石田秀範)
なんか『ドライブ』ちゃんと面白くなってきて毎週テレビに釘付け。
色々と粗が多いながらも前半で一通りの積み重ねをしてきていたので、ここにきてそれが効いてきた、という感じ。
●父と仮面ライダー
メインキャラの肉親が悪と繋がっていて……という展開は、『ウィザード』のコヨミと笛木や『W』のフィリップと園崎家、『龍騎』の神崎兄妹など、これまでにも何度か見かけたパターンですが。
剛のように「怪人たちの撲滅に血道を上げる」というのはたぶん初めてで、面白く感じています。
フィリップなんかは園崎家とモロに繋がっていたのですが、フィリップの場合は自身もガイアメモリ開発に関わっていたという〝罪〟があったので、「身内の始末をつける」という描き方はされていないのですよね。
「剛自身には何の罪もない」というのがいいところ。余命のないコヨミや神崎優衣のように、肉親が凶行に走る理由があったわけでもない。
一連のロイミュード事件が起こったのは蛮野博士とクリムが科学者としての欲望に従った結果であって、剛に責任があるわけではない。
クリム=ベルトさんはロイミュードを造った張本人ですから、ベルトさんがライダーシステムを造って罪滅ぼしに動くのはまあ「アリ」です。しかし、剛にそこまでの責任はあるのか?
犯罪者の子供は、親の犯した罪を償わねばならないのか?
そもそも危険な技術を開発して、それが人に危害をもたらしたら、罪に問われるべきなのか?
色々と考えることができる部分です。
『ドライブ』本編でそんな問いに答えることはたぶんないと思われますが、想像の余地があるというだけで楽しいものです。
剛の秘密、すなわち「父親はロイミュード開発者の蛮野博士」をここまで隠してきたのは、ある意味で成功だったなと。
仁良課長や001の参戦で、進ノ介もまた父親の存在について意識し始めたタイミング。
今回ブレンによって改めて「進ノ介の父はロイミュード001と因縁がある」と示唆されましたが、
もし進ノ介の父を殺したのが001なら、蛮野博士および息子の剛は、進ノ介に対しても責任を負わねばならなくなる。
少なくとも剛の論法で言えば、そういうことになる可能性はあります。
しかし、進ノ介の父が死んだのが12年前、と明言されたので、
もし001が直接殺したのだとすれば、12年前にはロイミュードたちは完成していて、半年前にグローバルフリーズを起こすまで10年も政界での足場固めを続けていたということになるのか……。
用意周到すぎるなあ。
●複数ライダーの性格
多数のライダーが入り乱れる平成ライダーシリーズ。『ドライブ』も本編登場ライダーは前回で3人となりました。
しかし、そのライダーたちの性格は当然ながらバラバラ。
時には作中で変化することもありますが、おおまかに登場人物の性格は「陽」と「陰」に分けられるでしょう。
平成ライダーは一作品に複数人のライダーが登場するので、「スタンスの異なる、対立するヒーロー」を描きやすくなったのもひとつのポイントかと思います。
で、ちょっとここ数年のライダーの性格をざっくり分けてみると。
翔太郎……陽 フィリップ……陰 照井……陰→陽(W)
映司……陰 伊達……陽(オーズ)
弦太朗……陽 流星……陰→陽(フォーゼ)
晴人……陰 仁藤……陽(ウィザード)
紘汰……陽 戒斗……陽 光実……陰(鎧武)
こんな具合になるのではないでしょうか。
で、ドライブの現状はというと。
進ノ介……陰 剛……陽→陰 チェイス……陰
今のところみごとに暗いライダーしかいない。
明るくて過去の因縁を持たない(もしくは気にしない)、「ガンガン行こうぜ!」タイプが『ドライブ』にはまったくいないのですよね。全員が何かに縛られていて、これは割と久々な気がする。
いかにして各々が自分の因縁と向き合い、それを乗り越えるか? というのが間違いなく後半の作劇の大きなポイントです。いい方向に転がってくれるのを期待したい(毎週言ってる)。
白倉伸一郎は何度か、仮面ライダーの基本的な要素を「同族争い」「親殺し」「自己否定」だと述べているのですが、『ドライブ』ではマッハとチェイスがこれら3つの要素にうまく符合しているように見えますね。
この点から見ると、実は主人公であるところのドライブは現段階ではこの要素を持っておらず、もっとも仮面ライダーらしからぬライダー、と言うこともできそうで面白い。
「剛の父親が蛮野博士」という、大きな因縁が明かされた今回。
来週だけではとても解決できそうにないだけに、剛の行く末が心配です。