『仮面ライダードライブ』第26話感想 ~帰ってきたはじまりの男~
思えば『仮面ライダードライブ』は、ロイミュードに敢然と立ち向かうプロトドライブの姿から始まりました。
あれから半年、ようやくチェイスが人間の味方として再び立ち上がった!
ここまで来るのが長かったぜ……!
第26話「チェイサーはどこへ向かうのか」(脚本・三条陸 監督・諸田敏)
エンジンかけ直したのかと思うくらい面白くなってきた。
ブログやツイッターなどで『ドライブ』に対する様々な方の意見を目にしているのですが、その中でも特に面白いと思ったのが、
「これまでのプロトドライブとしての行動も死神・魔進チェイサーとしての行動もプログラミングによるものであり、チェイス自身の意思はなかった」
というもの。
これは本当にその通りだと思います。
今までのチェイスは、誰かの命令に従うばかりの存在、まさに機械人形。
機械というものは、人間が何かの作業をこなすために造るものであり、また人間の命令なくして活動することはできない存在です。
フォーミュラに倒されて以降のチェイスの葛藤は、命令から解放された機械はどのような行動を取るのか? そもそも行動できるのか? というものだと言えるでしょう。
なんかSFチックな問いを孕んできたな……!
そしてそんなチェイスに指針を与えたのが、霧子です。
「チェイスが良心を取り戻せると信じている」という考えを時には態度で、時には口に出して幾度となく示してきた霧子。
今回「人間を救うのは俺の本能なのかもしれない」というチェイスの台詞がありましたが、チェイスがその本能に従ったのも、霧子の行動の結果なのですよね。
プロトドライブと死神の狭間で揺れ動いていたチェイスに、「お前は私を助けてくれた。人間の味方だ」と言い続けてきたことによって、人間の味方、すなわち仮面ライダーとして再起動する方へと傾かせた。
チェイスのバイクにスペアドライバーとシグナルチェイサーをくくりつけて寄越したりするシーンを見ても、チェイスという機械がフラットな状態から仮面ライダーになることを決めたようには見えない。
明らかにそこには、「チェイスに人間の味方をやってほしい」という霧子の意思が介在している。
ずっとチェイスに肩入れしている霧子ですが、剛との今回のやり取りなんかを見ても、そのエゴが垣間見えるんですよね。
剛「姉ちゃんがあんな奴うかつに信じたからだろ?」
霧子「チェイスは悩んでるのよ、まだ。自分の行くべき道が見えてないの」
剛「自分の道が見えてないのは姉ちゃんもじゃないか」
霧子の声のトーンが浮気の言い訳みたいで見てるとき不覚にも笑っちゃったんですけど、それはさておき。
ここで言う「チェイスの行くべき道」とは何だろうか。
人間の味方、仮面ライダーとして再起動する道か。
死神・魔進チェイサーとしてハートたちのもとに戻る道か。
もしチェイスが死神に戻る道を選んだとして、霧子が大人しくそれを受け入れるとは思えないのですよね。少なくともこれまで、そんな物分かりのいい人間として霧子は描写されてこなかった。
つまり霧子の口にした「チェイスの行くべき道」とは「人間の味方をする道」でしかありえない。
まだチェイスは人間の味方に戻る踏ん切りがついていないだけ、というニュアンスです。霧子にしてみれば、自分を救ってくれたチェイスが人間の敵として存在するのは、受け入れがたいことなのでしょう。
機械に救われてしまった霧子の欲望を感じる、面白いところだなあ……!
欲望と言えば、今回は進ノ介にもエンジンがかかりました。
父の死の真相を知りたいという、出動要請を無視してハート様に突っかかるほどの強い欲望。
父の死とロイミュード001、そして警察組織がつながることによって、進ノ介には何が何でもロイミュード事件を解決したいという欲望ができた。
たびたび「どんより」していた進ノ介ですが、これからはロイミュード事件に血道を上げて挑むことになるでしょう。トップギア入りっぱなしです。
ただ、それほどに父親が進ノ介にとって大きな存在であるのなら、事前にもっと進ノ介の父親への想いを描いておけよ!と思いもします。
たとえば『キバ』では、音也を知る人間を現代編でも登場させることで、「渡にとっての音也」というものを構築し、渡自身の成長をも描いていく、という段取りがありました。
それが『ドライブ』前半にあったかというと、首を縦には振れない。先輩の警察官が周りに何人もいるのだから、進ノ介の父親についてもっと言及があってもよかったのですが。
今回「彼を知らない人間はいませんよ」とか課長に言わせたところで、それはとってつけた説明台詞に過ぎないのですよねえ。
忘れちゃいけない、今回ついに明かされた001の正体。
1話アバンタイトルでグローバルフリーズが世界規模の事態として描かれているにもかかわらず、本編はあまりに平和。警察がロイミュードのことを知らなさすぎる……それが『ドライブ』の世界観における最大級の問題だったのですが、
「実はロイミュード001が警察周辺の権力者になりすましており、情報統制をしていた」
という大技を繰り出してきました。
前述の通り、進ノ介の父親との因縁も盛り込むことによって、どんより主人公のやる気スイッチをオンするというおまけつきです。
スタッフは「最初からこうするつもりだった」のか、「これまでがガタガタなので001に全部押しつけた」のか、どっちでしょうかね……!
いくら参議院議員だからって、世界規模の事件の情報統制なんかできるのか?というツッコミはあるのですが、そこはとりあえず気にしない。
001の登場、チェイサーの仮面ライダー復帰、と物語が大きく動いた今回のエピソード。
後半戦に向けてまずは順調な滑り出しだったので、ここからはトップギアで駆け抜けていってくれることに期待したい。いやほんとに。
次回予告見るとまたちょっと進ノ介が蚊帳の外のようですが、大丈夫か?