進撃の巨人コラボを探る。 ~進撃してるのは巨人じゃない、もっと何か別のもの?~
昨日の記事は改めて読み返すと我ながらイっちゃってる感があります。酔いと深夜のテンションって恐い。
さて、近所に弁当販売の全国チェーン「ほっかほっか亭」がありまして、ちょくちょくそこのお世話になっているのですが、先月店の前を通りかかると進撃の巨人キャンペーンだかなんだかいうものをやっておりました。
既存の惣菜を作品にこじつけて弁当作りました、といういかにも「苦肉の策」でしたなあ。今はもう終了しましたが、「へーこんなのやってるんだー」と心の片隅で覚えていました。結局進撃の巨人弁当は一度も注文しなかったけどな!
それで、何に驚いたかというと、箸を構えて弁当に肉薄する超大型巨人のイラストと、エプロンをつけて可愛らしくデフォルメされたキーホルダーのデザインですよ。さらに言えば応募して抽選でもらえるのがリヴァイの掃除シーンフィギュアというのにも不思議な感覚があった。
そこはかとない違和感。
『進撃』はアニメが始まった直後くらいに友人から原作を借り、その後も自分では単行本を買うことなく人から借りて読み続けているのですが、原作もアニメ本編も割とダークでグロテスクな作品だなあ、という印象があります。
人はバタバタ死んでいくし、爽快感あふれるシーンというのもそんなに多くない。絵も決して美麗ではないのですが、アクションシーンの迫力にも目を見張るものがありました。
この作品の魅力というのは、「どう足掻いても勝てない圧倒的な存在との戦争」「そんな中でも身体を張って生きていくしかない人間の悲壮さ」あたりだとわたしは思っています。
一方で、リヴァイを中心としたキャラクター人気(ぶっちゃけ腐女子のおもちゃ)が本作を支えていることもまた事実ではありましょう。けれども原作比二百パーセントくらいでイケメン度増し増しにされた野郎どもがきゃっきゃうふふしているイラストをひょんなことから見かけたりすると、いたたまれない気持ちになったりもします。
デフォルメキーホルダーだとか、掃除シーンフィギュアだとかいう部分だけを切り取ってきて、そこだけを楽しむ。タイアップする側の企業も、巷で大人気の『進撃』ですから、そんな企画を割とすんなり受け入れてしまう。そんなところに、一抹の不安めいたものを覚えずにはいられません。
アニメに限らず、「笑いのネタとして楽しむ」という方法で何かを鑑賞することが、最近とみに増えた気がします。半年ほど前はニコニコ動画で『半沢直樹』のMADがそれなりに流行っていた覚えがあるのですが、そういうことに近い気がする。
すなわち、自分にとって面白いもの、都合のいいものを切り取って、「ネタにして」遊んでいる。
それが一概に悪いとは言いませんが、都合のいいものだけを受容するってのも楽しみ方としてはどうなのよ、と思わずにはいられない。
ネットの普及をはじめとする諸々の要因によって、趣味の多様化は起こったし、テレビから垂れ流される娯楽を口開けて待ってるだけ、という時代は終わった。だけどそれは同時に、欲望の赴くままにあらゆるものを取捨選択して選り好みできる時代になった、ということでもある。
テレビ時代から多少はそういう傾向があったのかもしれないけど、より顕著になってきた気がする。たまにはもうちょっとこう、清濁併せ飲む的な受容の仕方をしてみてもいいんじゃないのかなー、と。夕陽に照らされて輝く超大型巨人のポスターを見ながら考えていたのでした。