『仮面ライダー鎧武』総括感想 ~Just Live More~
なんとかドライブ開始前に書き上がった……。
毎年のことですが、1年間続いた番組が終わると寂しさがあふれてきます。
というわけで無事終了した『仮面ライダー鎧武』、いろんな感想をつらつらと。
●「祭り」という感覚
平成仮面ライダー第二期と俗称される『W』以降の作品は、映画や別作品とのコラボレーションを打ち出してくることがもはや当たり前。これは『電王』『ディケイド』あたりを受けてのことでしょう。
この流れを決定づけたのは、何と言っても『オーズ』。
春映画『レッツゴー仮面ライダー』、本編への歴代怪人の出演(1000回記念の回)、夏映画における暴れん坊将軍の登場など、非常にイベントフルなライダーでした。
直前の作品であるWが基本的にはあくまでも『W』という世界観を崩さない映画やスピンオフだったこととは対照的。
このようなコラボレーションは、もともと10周年記念の『ディケイド』だから実現できた「お祭り企画」でした。
この大々的なお祭りが、平成ライダーシリーズの躍進に寄与したことは言うまでもないですが、いくら当たったとはいえ毎年『ディケイド』みたいな作品は不可能です。
そこで、『ディケイド』ほどではない、やや規模を縮小したお祭りが続くことになる。
とはいえ、普通のお祭りではお客さんが呼べないので、人を集めるための何かが必要になります。それが『オールライダー対大ショッカー』や『レッツゴー仮面ライダー』から続く、『スーパーヒーロー大戦』系統の春映画、ヒーローたちのコラボレーションなどなど。
『鎧武』のひとつの特徴は、ディケイドほどではないにしろ相当な規模の「お祭り」をやったところにあります。
トッキュウジャーとの共演&1号・2号・V3の登場。
ワールドカップに合わせての、サッカー選手の出演。
これらは映画やTVSPではなく、すべて日曜朝8時という通常の放送枠で行われたものです。
ここまで分け隔てなく色々な連中とコラボしたヒーローは、日本広しといえどそうはいません。
さらに果物モチーフのライダー、虚淵玄のメインライター起用、2話完結方式の廃止など、本作はずっとこれまでにない「驚き」に満ちていました。
つまり、『仮面ライダー鎧武』はお祭りだった。
ディケイドが大規模、オーズ~フォーゼが小規模とすると、鎧武は中規模のお祭りだったのだと思います。
●ぼくたちがヒーローになる時
『鎧武』のシナリオは賛否両論あると思いますが、個人的には好きです。
フルーツのライダーやってください、というオーダーからこれだけのものを考えて書いたという点においては、虚淵玄はもっと評価されるべきだと思う。
ただの「子供」だった若者たちが力を手に入れ、衝突しながらそれぞれに信じた道を行き、「何のためにこの力を使うのか?」という問いに向き合う。
自分なりに納得できる未来を目指して、変身しようとしていく。
その過程を見る旅に我々は参加し、そして旅の結末を46話・47話で見たわけです。
なんとなく『鎧武』の物語って旅をしてたイメージなんですよね。
ご近所から始まってだんだん遠くに出かけるようになって、でも最後には元の場所に帰ってきました、みたいな。
キャラクターたちもよかったです。前にも確か書いたのですが、本作はとにかくキャスティングがよくて、ハズレ役がほとんどいなかったのが大きい。
中でもやっぱり紘汰は、欠点含めていい主人公だったと思う。何をしたいのか、何をすべきか、迷ったり折れたりしながらも困難に立ち向かっていった。
平成ライダーでは数少ない(剣崎と渡くらいか?)成長型主人公ですが、「一歩ずつ前に進んでいる」のがとにかく伝わってきて、こちらもその歩みを見守っている気持ちになれました。
●ここが残念? 脚本陣
ストーリーの粗は探してる人がいくらでもいるだろうからさておくとして、
とにかく台詞が長い!多い!クサい!
青木玄徳(戦極凌馬)やぐっさん(サガラ)といった年配のメンバーは巧くこなしていたのですが、小林豊(戒斗)や高杉真宙(ミッチ)は滑舌もたまに怪しかったり、言うのに苦労している感じを受けたり。
『剣』前半や『フォーゼ』なんかもちょっと思ったのですが、
特撮ヒーロー番組にもそれ相応の作法、すなわちアニメ・小説・漫画などとは違ったシナリオや台詞の組み立て方があるはず。
それに触れてない人間がいきなり特撮の脚本をやった作品だと、脚本書く方もそれを撮る方もかなり苦労を強いられてるように見える時があります。
虚淵玄は設定やアイデアという面ではベストな仕事をしていたと思いますが、「脚本を実写映像作品にした時にどうなるか」という点に力が及んでいなくて、ちょっと残念だったかな、と。
個人的に「これはマズイだろ……」と強く思ったのが、19話あたりのバロンVSシグルド戦。
戒斗を演じる小林豊さんは特に長台詞を苦手としている印象があったのですが、このバトルはアクションしながらの長い台詞ということで、これ録るの苦労しただろうなあ……でも聞き取れないよなあ……などと考えてた記憶。
短い台詞でガツン! と来るのはほとんどなかったかな、と。
後述の、紘汰さんの名台詞も全体的に長い。
●マイ・ベストエピソード
最後にまったくの趣味で選ぶ、『鎧武』の名エピソードを3つほど。
3位・第31話「禁断の果実のゆくえ」
「きっとむこう側の世界にも未来があった……なのにあの森に負けちまったのは、お前のような奴がいたからだ!」
紘汰さんがオーバーロードとの正面対決を始める回。ついでにシド退場。
『鎧武』の戦闘ってわりとアクションがもっさりしてるんですけど、カチドキVSデェムシュという非常に動きづらそうなスーツで頑張ってます! という殺陣が見どころ。
あとこのエピソードはなんと言っても引きと次回予告。
戒斗&ザックのダブル変身からの、予告での5人ライダー共闘、鎧武の極アームズへの変身。
燃えないわけがない。
2位・第5話「復活!友情のイチゴアームズ!」
「強い奴の背中を見つめていれば、心砕けた奴だって、もう一度立ち上がることができる! 誰かを励まし、勇気を与える力。それが本当の強さだ!」
龍玄の実質的な初陣、鎧武とバロンの初バトル、黒影&グリドン登場など盛りだくさんな回。
ミッチの強さを認めている紘汰の姿が見られて、信頼の置ける弟分、みたいに思ってたんだろうなーと想像させます。
前回で斬月にしばき倒されてくじけた紘汰が復活を遂げる、持ち前の立ち直りの早さはこの頃から変わらず。
一方、シドにドライバー配布者リストを渡されても目を通さない貴虎。彼の取った行動が異なっていたら、『鎧武』の物語はまったく違った方向へ行っていたことでしょう。
1位・第40話「オーバーロードへの目覚め」
「俺の味方かどうかなんて関係ない。守りたいものは変わらない! たとえ俺自身が変わり果てたとしても!」
人間の身体を失っても、誰に罵られても、心までは捨てない。
レデュエの見せる幻、この手で殺した裕也が生きている世界。そこで紘汰が見せる決意の強さと悲しさが炸裂する、『鎧武』屈指(だと思ってる)の燃えエピソード。
ビャッコインベス(紘汰)VSレデュエ&インベス軍団のシーンが本当に大好きです。朝8時からテレビの前でボロ泣きしていた記憶。そして今でもBGM「ロックシード」を聞くとちょっとグッとくる。
こうしてみると、紘汰がなんかいいこと言う回が好きなんですねー私。
というか、紘汰が何かしらの決意をする回がシナリオのターニングポイントとして作られているので、必然的にそこに燃え要素が投入されるわけなんですが。
そして紘汰を演じた佐野岳くんがまた非常によかった。
先日見直して気づいたんですが、佐野岳くんの演技や声が序盤はかなり軽いんですよね。まだハードじゃないストーリーだったということもありますが、それを差し引いても
演技における心情の表現、台詞への感情の乗せ方がストーリーと共に上達していました。
さて、やたらと長くなりましたが。『仮面ライダー鎧武』、1年間とても楽しめた作品でした。
明日からのドライブも、楽しい作品になるといいなー。