横須哲斗のごった日記

仮面ライダーを中心にまったり語るブログ。アニメ・漫画・小説・ゲーム・映画など諸々。

『新 仮面ライダーSPIRITS』旧1号&旧2号篇感想 ~俺が2号でお前が1号~

ニコニコで今週配信分の『仮面ライダー』を観ていた時に、「この4話のラストシーンが新SPIRITSの冒頭に繋がっている」というコメントを見かけたので、購入してきました。

『SPIRITS』は雑誌移籍前のものを漫画喫茶かどっかで流し読みしたことがある程度なのですが、「今夜はお前と俺でダブルライダーだからな」とか「正義 仮面ライダー2号」とかかっこいい台詞とシーンにあふれていて好感触だった覚えが。昭和ライダーのテレビ本編をじっくり視聴していればまた新しい楽しみも発見できていたのでしょうが、当時は昭和ライダーをまともに見ていなかったのが今となっては残念。これを機にまた読み返してみようかしら。

 

この旧1号・2号篇は、テレビ本編ではいきなり登場した仮面ライダー2号こと一文字隼人が改造人間となって戦い始めるまでの経緯が描かれた番外編です。

謎の組織ショッカーが起こした数々の事件に関わっている男・本郷と、それを追うカメラマン・一文字。確かテレビ本編とは微妙に設定が異なっていたような気がする(あやふや)のですが、細かいことは気にしない。ショッカー被害者の会とともにその悪の影を追う一文字は、ルリ子に取材を申し込み、少しずつ真実に近づきつつあった。だがその素質を死神博士に認められたことがきっかけで、ショッカーに捕らえられてしまう。

時を同じくして、緑川博士の遺品の中からショッカーのアジトの地図を発見したルリ子は、一文字を救うべく被害者の会メンバーを伴って秘密基地へ侵入する。同じ基地への潜入を本郷・滝・立花も果たしていたが、そこで本郷が見つけたのは、自分そっくりに改造された一文字の姿だった。

一文字を救出した本郷だったが、滝と立花が敵に拉致され、その行く手には5人の新型改造人間(ショッカーライダー)が立ちはだかる。圧倒的に不利な状況の中、ルリ子の言葉で戦いを決意した一文字が、その場に現れた。

「ムチャでもしなきゃ倒せる相手じゃねえ そうだろう1号ライダー」
「……俺が 1号?」
「そうだ 何故なら 俺が2号だからさ」

ついに並び立った2人の戦士が、今、悪に対する反撃の狼煙を上げる――。

 

やー、面白かった。

改造人間となるにあたって、本郷とはまた違った悲しみを抱え込むことになる一文字が実に魅力的。本郷はわけもわからず拉致されたかと思いきやいつの間にか改造人間にされていた、というビックリドッキリな経歴を持っているのですが、ショッカーの悪を必ず暴くという信念を持ち仮面ライダーの存在をも知っている一文字が、砕くべき悪だと誓っていた改造人間にされてしまう……という経緯も、非常にきついものがあります。

おととしの秋に出た『ユリイカ』で白倉伸一郎氏が仮面ライダーを解体して、「親殺し」「同族争い」「自己否定」という三本柱の説明をしてたけど、漫画版の一文字なんてまさにこの「自己否定」ヒーローですよね。仮にこの世から悪が滅んだとしても、彼が明るく飄々と生きている姿なんてものはなかなか想像できない。

一方そんな一文字を助けたことで、彼を戦いの道に引きずり込んでしまった本郷もまた、新しい苦悩を得ることになる。ショッカーを壊滅させるまで挫けないと決めていたはずの本郷が、同胞になりうる一文字を前にして、「まるで 人間のように」仲間を求めてしまう。それは誰も巻き込まずに戦おうと考えていた本郷の罪でもあるし、同時に彼がまだ人間らしさを残していることの証左でもあるんですよ。「俺はお前を助けなければよかった」という言葉も真実ではあるし、孤独に耐えられなくなりつつあったのも本当でしょう。

それでも本郷が一文字を助けたのは、まさにこの『新SPIRITS』冒頭で子供の頭をなでているように、本郷に人としての優しさが確かに残っているから。そしてそんな本郷に応えるように、一度は剣を捨ててペンを取っていたはずの一文字が立ち上がる。やっぱり初代ダブルライダーの存在感は別格ではないかなと思います。私は平成ライダーから入って昭和ライダーはろくに観ておらず、思い入れも何もないのですが、それでもこの本郷・一文字のコンビはすごく好きです。

そんなわけで今回の結論は、「優しさは弱さでもあり、強さでもある」ということでひとつ。