横須哲斗のごった日記

仮面ライダーを中心にまったり語るブログ。アニメ・漫画・小説・ゲーム・映画など諸々。

漫画『仮面ライダー』感想 ~俺たち二人で一人~

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ちょっと前に古本屋で2巻だけ見かけて以来、買おう買おうと思っていた漫画版『仮面ライダー』ようやく揃えられました。

作者はもちろん石ノ森章太郎氏。この作品は放映と同時期に少年誌で連載されていたもののようです(私が買ったのは中公文庫版)。全3巻で6話というエピソードの少なさにはちょっと驚かされましたが、調べてみるとひとつのエピソードを複数回に分けて連載していた様子。

 

なんでまたこんな古い作品を買う気になったのかというと、2巻を立ち読みした時に、とあるシーンを見てしまったことがきっかけ。

ショッカーライダーに取り囲まれた本郷が、銃の乱射を全身に浴びて殺される。

見開きで描かれたそのワンシーンに衝撃を受け、近場の古本屋を探し回っておりました。Amazonなら全巻新品で買えることに気づくのがいささか遅すぎた。

ポイントは本郷の死という衝撃的なイベントに続く、一文字隼人の目覚め。一文字も元々はショッカーライダーのメンバーというのは、しばらく前に感想を書いた漫画『新SPIRITS』の旧一号・二号篇と同じですね。たぶんこっちがネタ元でしょうが。

本郷との戦闘で頭部に傷を負い、洗脳が解けた一文字は、本郷の遺志を継ぐことを選択。一方、かろうじて脳死に至っていなかった本郷は、その脳神経を一文字の身体に遠隔接続する……。

「いくぞ猛 これからは おれたちはもうひとりぼっちじゃない!」

「いつもふたりだ――ふたりでショッカーと戦おう……!」

バイクで走っていく一文字・二号ライダーの姿が描かれて、主人公の死亡~交代という衝撃の第4話「13人の仮面ライダー」は幕を閉じます。本郷こと一号ライダーの実質的な死を迎えていながら、この燃える展開。

たまりません。

直後の第5話「海魔の里」でいきなりライダーのメカニズム図解が1ページ丸々使って挿入された時には笑いを禁じ得なかったけど。

 

ちょうどニコニコでの公式配信も二号ライダー編に映ったところですし、タイムリーなタイミングで買えたかな。

仮面ライダーの交代劇は藤岡弘、氏のバイク事故によるものである、という話は有名ですが、

「本郷さんはショッカー海外支部をブチのめしにいったので、今日から日本は私が守ります」

といきなり登場する一文字は、あまりにも唐突すぎる展開ではあるものの、主演の交代という一大事件を上手く処理したなあ、と感心。このエピソードによって、それまで全体的にこぢんまりしている印象のあったショッカーが、「悪の組織」として機能し始めた気がします。

日本の片隅でナチスの財宝を血眼になって探したり、それに失敗したら金の保管所を襲ったり……

と、ちょっと金策に走ってる感すらあったショッカーが、一気に世界規模のテロ組織へと変貌したわけですからね。

スケールが違い過ぎる。

 

あと、この漫画版1巻のラストには石ノ森章太郎氏によるあとがきらしきものが掲載されていたのですが、そこでの文言にちょっと思うところあり。

「歪んだ道を歩んでいる文明に対する自然からの叛逆。その使者として、実は仮面ライダーが誕生した」
「自然(バッタによる象徴)が直接人類(文明の象徴)に反旗を翻すのではなく、仮面ライダー(バッタと人間のハーフ)、即ち自然と人間が協力して悪に立ち向かう……。自然と上手に共生することが人間の叡智。仮面ライダーこそが真の文明のシンボルなのだ」

こう書かれています。

で、この言葉に則ってみると、現在放映中の『鎧武』は意外と初代ライダーのコンセプトというか遺志を汲んでるところがあるのでは?

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ヘルヘイムの侵略とか、モロに「自然の叛逆」って感じだし。今まさに紘汰が模索してるのも、ヘルヘイム=自然との共生と考えられるし。

ただヘルヘイムが作中の地球、それも沢芽市にクラックを開いた理由ってのがはっきり説明されてなかった(はず)ので、文明の歪んだ発展に対する自然の叛逆とは今のところちょっと明言できないかも。

虚淵玄氏がここまで考えて作っていたかどうかは定かではありませんが、ともかくこの奇妙な一致には、正直なところ驚嘆を覚えずにはいられませんでした。

 

余談ですが、この漫画版読んでると無性に映画の『THE FIRST』を観たくなってきます。コブラ男の話はこの漫画が元ネタっぽいし。

脚本・井上敏樹で監督が長石多可男とか初代ライダーの系譜を正当に引き継いでるって感じがしますよね。

映画の中身? それは言わないお約束……。