横須哲斗のごった日記

仮面ライダーを中心にまったり語るブログ。アニメ・漫画・小説・ゲーム・映画など諸々。

平成仮面ライダーを探る。共存編・その2 ~たとえ、世界を敵に回しても~

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ちょっと間が空きましたが『カブト』の話。

何と言っても本作は、ワームとネイティブという存在を生み出したという点で褒められるべきではないでしょうか。一部のストーリー・設定・伏線は残念極まりないですが。

人間の姿にそっくりそのまま擬態し、その記憶さえも引き継いで社会に紛れ込む。実際にいたらこれほどイヤな怪人もそうそういません。

ワームの持つおどろおどろしさがもっとも伝わってくるのは、オープニングテーマのAメロの映像だというのが私の持論。

廃墟に佇む怪人の集団。一瞬ののち、そこには微笑んでめいめいに歩き出す人々の姿がある……。

ごく短いカットながら、すぐ身近に怪人が潜んでいるかもしれない(そしてそいつらと仮面ライダーが戦っているかもしれない)、という本作の魅力のひとつを引き出す良い映像だと思ってます。

 

作中においても加賀美の弟をはじめ、人間の外見と記憶を利用して多くのワームが暗躍しました。いちいち挙げてるとキリがないですが、ちょろっと再見してるとやっぱり加賀美の弟ワームは悪辣だなあと。

一方で対象の記憶がワームの自我に勝って自分を人間だと思い込んだ剣や、一時的に怪人である記憶を失ったウカワーム=麗奈が示したように、人間と共に歩んでいくことも――ワームであることを忘れられさえすれば――決して不可能ではない、という姿が示されました。(もちろんワームとしての記憶が勝ってる連中は共存なんぞドブに放り捨てていくわけですが)

 

これに対し、物語後半から登場したネイティブは、平成ライダーにおける「共存」を考えた時に、けっこう重要な存在である気がします。いわば本作のキーになる連中。

さてこのネイティブ、思わせぶりに登場しつつも出番としては少なめ。最初は人間に紛れて平和に暮らしてるのかな? みたいな感じだったのですが。最初だけは。

マスクドライダーたちがワームを一通り殲滅し、本編が残すところ3話となった押し迫った状況で、彼らはワーム感知ネックレスやら人間をネイティブに変える謎の装置やらを次々に繰り出してきます。

いちおう擬態天道が伏線というか前振りにはなっているのですが、放映当時はどうしても性急な感が否めませんでしたね。

とんでもねえなこいつら(いろいろな意味で)と思った視聴者も少なくないことでしょう。

で、人類ネイティブ化計画をおっ始めたネイティブの上層部に向かって天道と加賀美がダブルライダーキック! 爆発四散!というのが『カブト』のオチです。

乱暴にまとめましたが、まあ要するにネイティブの人間に対する思想ってこういうことだと思うんですよ。

「おとなしく俺たちと同じ種族になれ。同じ種族なら一緒に生きていけるだろ?」と。

ネイティブは、「異なる種族と共存する(ないしは殲滅する)、あるいはそのための道を模索する」という発想をぶん投げている。

そりゃ同じ種族になれば楽でしょう。得体の知れない異種族と一緒に暮らすのは誰だってイヤですからね。ワームやネイティブは造形がちょっとコワいもんだから余計に。

でも、同じ種族になればみんな平和に生きていけるのか? 人間を強引に同じ種族に変身させて、それで一緒に生きていこうというのか?

彼らは「俺たちネイティブが貴様ら人間を支配してやるぜ!」とは言わない。そっちならまだ少しは救いようがあると思う。自分と相手が違う存在であるということを、とりあえずは認めてるわけだから。

けれどもネイティブはそれを許さない。人間に対して、あくまでも「自分たちと同じネイティブになること」を強要する。

 

人間を自分たちと同じ種族に変えようと行動するのはオルフェノクなんかも同様ですが、オルフェノクは元が人間ですからね。あと後半は実質的に王探しが主目的になって、人間をオルフェノクに変えていく作戦の方は割とおざなりだったし。

異形の存在として人間社会からいわばこぼれ落ちたオルフェノクが、人間をオルフェノクに変えようとするのはまだしも理解できるところがある。やっぱり元々は同じ人間ですからね。

これに対し、密かに準備万端整えて、有無を言わせず人類を残らず自分たちと同じ異形の存在に変えてしまおうとしたネイティブは、まさしく「人間の自由を奪おうとする」者たちです。

さすが35周年の原点回帰と銘打っただけのことはあるな、カブト!

 

さて主人公の天道は、そんなネイティブの肉体を持つひよりを守ろうとします。たとえこの世界を(すなわち全人類やネイティブを)敵にしてでも、と自ら口にして。

生まれながらにしてネイティブの肉体を持っており、
人類の中で生を受けて人間の精神を持っている。

そんなひよりを、天道は全力で守る。世界の誰が何と言おうと、どんなことをしようと、ひよりの存在を肯定する。

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この辺のゆるぎない信念が、天道が属性山盛りの最強系主人公でありながらも多くのファンに受け入れられてる理由のひとつではないかなと。

仮面ライダーカブト』は人類の自由を奪おうとするネイティブとの闘いであると同時に、異形の存在であるひよりが人間・天道の承認を受けて成長していく物語でもある。

天道と加賀美のダブル主人公の物語である『カブト』ですが、ひよりが裏主人公でもいいんじゃないかしらん。

ひよりのモノローグから始まってひよりが料理作って終わる番組だしね!

 

とまあ綺麗にまとまったところで、今回はこれまで。この後の『電王』から、異形の存在が主人公のパートナーとして活躍する、というパターンが増えていくことになります。

ところでひよりって天道の実妹なの? 義妹なの?