『劇場版 仮面ライダー555 パラダイス・ロスト』感想 ~忠犬ウルフオルフェノク~
お久しぶりです。
どうも忙しくなるとブログの更新頻度が落ちてしまいますね。もうちょっと日々の更新の優先度を上げていきたいところ。
さて、何ヶ月か前に『仮面ライダーTHE FIRST』見たいなーとかいう記事を書いて、ちょくちょく近所のレンタルショップに足を運んでいたのですが、いつ行っても貸出し中。
憂さ晴らし的に借りてきたのが今回の『パラダイス・ロスト』。
私見ですが、平成ライダーの映画が作られ始めて13年をけみした今でも、「映画単体として見た場合のデキ」ならば一、二を争う作品ではないかと。
個人的な好みで言うと『運命のガイアメモリ』とツートップなんですが、あっちはテレビ版Wありきの感動ですからね。
まずは好きな箇所でもあげようかと思ったのですが、あまりに多くて困る。
電飾変身とか、アクセルクリスマとか、啓太郎カイザとか、「俺は今まで何をやってきたんだー」とか、高速対決から紙一重で勝利するサイガ戦とか、盛りだくさんすぎます。
顔芸を披露する草加やなぜか首だけの社長、オリーブまみれになる前の速水もこみちも見逃せません。
その中であえて一番を選ぶとしたら、やっぱり終盤の巧VS木場の一連の流れですかね。
先に『運命のガイアメモリ』が好きだと言いましたが、仮面ライダーが風都民の応援を受けて大逆転勝利を決める、というあのラストが好みなんですよ。『ウルトラマンティガ』とかでもあったけど、
ヒーローを信じる人々の力が奇跡を起こす
というのはすごく燃える。
で、『パラロス』のラストバトルはその正反対なわけです。一万人の大観衆は設定上みんなオルフェノク。その全員がファイズにブーイングを、オーガに声援を送る。
さらに言えば、罵声を浴びせられているファイズ=巧もまた、その正体はオルフェノクです。
一万人の同胞に目の前で罵られながら、仮面ライダーとして、人間のために戦う巧。
ここまではっきりと「仮面ライダー=孤独なヒーロー」であることを表現する
シーンは、平成ライダー長しといえどそうそう見かけません。
巧はなんでそこまでして戦うのか……というと、まあ真理のためなのですが。
というか、巧は基本的に真理を助けすぎ。
テレビ本編では過去に北崎から守ってたし、真理が死んだ時も正体明かしてまで蘇生させるし。小説版だとそもそも真理を助けたから命を落として、オルフェノクになってる。
なんだこの忠犬は……?
とまあ冗談はさておき、巧が真理のために戦うのは、
巧のことを真理がきちんと受け止めて、対等な相手として認めてくれるから
ではないかな、と。
この映画の巧は、テレビ版17話くらいは経由してるはずなので、戦う決意は固めてるはずですが、5話で真理に吐露した本音とか、そういう自分の弱さから逃れきっているとは言いがたい印象。
でもそういう自分の存在を認めて、笑ってくれる相手の存在は、非常にありがたいものです。
「きついな。お前の期待に応えんのは」
「できるよ巧……巧なら。だって、巧は巧だから」
このやり取りだけでもう、巧はいくらでも戦えるし、報われてるんじゃないかしら。
なんとなく、巧と真理はお互い恋愛感情って芽生えなさそうなイメージがあります。兄と妹のようでもあり、姉と弟っぽくもある。あの二人の間に形成されているのは、恋愛じゃなくて信頼関係でしょうね。
映画の最後の、二人で手を繋いで歩いていくシーンなんかを見てると、特にそう思います。
ここの状況や台詞が文庫版ファイズの後日談で拾われてた時にはちょっと泣きそうになった(実話)。
この映画の残念なところを指摘するなら……ミナをはじめとした脇役たちの適当な感じ、かなあ。ミナとの生活は、「真理と出会わず、平穏な人生を送ったかもしれないもう一人の巧」ということでいいとは思うんですが。
わけもなく社長を首だけにしてみたり、最後で押し潰させてみたり、テレビとは違うことをしようとしたけど持て余した部分がなきにしもあらず。
なぜライオトルーパー部隊に連れ去られた巧が、記憶を失って靴屋の居候なんぞやっているのか。細かいことを気にしていたら映画は楽しめないぞ!
あと、忘れちゃいけないのがところどころに漂うイタさ、こっぱずかしさ。
真理が「闇を切り裂き光をもたらす、救世主ファイズ」とかいう噂を真剣に広めていたりとか。そういうノリが合わないという人はちょっと苦しいかもしれません。
仮面舞踏会の破壊力は尋常じゃない。
以上、個人的に大好きな映画の紹介でした。
「あと一度だけでいいから、白倉×井上が全力投球で作ったライダーが見てみたい!」とかたまに思うのですが、やっぱり私はゼロ年代ライダーに魂を引きずられてるんだなあ。
でも本当に、現在の世の中やここまで続いてきた平成ライダーシリーズを受けて、白倉×井上コンビがどんなヒーローを描き出すのか、というのはすごく気になるところ。